さとらないの日々

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ブーバーの「我と汝」(カウンセリングの基本だよね)

 ユダヤの思想家マルティン・ブーバーは、人間には二つの交流の世界があるという。ひとつは「我と汝」の関係性。一人称の私が、二人称の君と、直接向き合って対話する関係世界。もうひとつは「我とそれ」。一人称の私が、三人称の事物的現象を冷たく眼差したときに成立する関係世界。つまり一人称の私にとっては、対話を交わし心の交流を行いうる二人称の出会いの場面と、およそ対話的交流をかいた疎遠な第三者的な三人称の事物的対象世界の場面との二つの世界がある、言っているのである。

 ブーバーによれば、「人間は、それと指しうる事物的対象なしでは生きることはできないが、しかしそれのみで生きるものは人間ではない」「すべての真実の生とは、出会いである」という。
 近代社会は、事物的世界を増大させ、共同体を破壊し、個々人を孤立せしめ、「人間の孤独の新しい増大が同時にたち現れた」。けれども「人間は、自分の自己へと関係することによってでなく、他の自己へと関係することによってのみ、全(まった)きものたりうるのである」という。

汝との対話的なあり方の中でのみ、人間は本当に充足されうる。つまり人間の「自己」は、ほんとうには、「汝」と呼びうる「他者」との「出会い」において初めて成立しうるといっているのだ。